2023/11/09
歯を失ってしまった場合、そのまま放置するわけにはいきません。
特に前歯は目立つので、失った場合は身だしなみの点から見ても治療を急ぐ場合が多いのではないでしょうか。
本記事では、前歯のインプラント治療の費用や注意点などについて分かりやすく解説します。
虫歯や歯周病、またはスポーツや事故など、前歯を失う原因にはさまざまなものがあります。
前歯を失ってしまった場合の治療方法として、選択肢は3つです。
入れ歯、ブリッジ、インプラントそれぞれの特徴について解説します。
前歯を失った場合、部分入れ歯で補うことが可能です。
入れ歯では失った歯の部分を樹脂でできた人工歯で補い、両隣の歯に金属を引っ掛けることにより固定します。
入れ歯はバリエーションも多く、保険適用になるため費用も抑えることができるのがメリットです。
しかし入れ歯を安定させるために両隣の健康な歯に負担をかけることになるのがデメリットとなります。
取り外しが可能なので、お手入れの面では衛生的ですが、慣れるまで違和感があったり、食事や会話のしづらさを感じたりするかもしれません。
ブリッジは、失った歯の部分を人工歯で補って、両隣の歯には被せものを装着して固定する治療方法です。
被せものを装着するためしっかり固定でき、保険適用のものも選べるため費用が抑えられます。
しかしブリッジの場合も失った歯の両隣の歯に負担をかけることになるのがデメリットです。
ブリッジでは、被せものを装着するために健康な両隣の歯を削らなくてはなりません。
削ってしまうと元には戻らないため、慎重に決断する必要があります。
また、ブリッジと歯茎の隙間に食べカスなどの汚れが溜まりやすくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高まるのにも注意が必要です。
インプラントは歯を失った部分に人工の歯根を埋め込み、その上にセラミック素材でつくられた人工の歯を被せることによって歯を補う治療法です。
構造的に天然歯に一番近いため、見た目も自然に仕上げられます。
また、失った歯の部分だけを治療するため、両隣の健康な歯を痛める心配がありません。
インプラントのデメリットは、保険適用外になるので他の2つの方法に比べて治療費が高くなることです。
しかし、インプラントはお手入れによっては半永久的に使用することができます。
他の2つに比べても耐用年数が長くなるため、費用の高さは一概にデメリットだともいえないでしょう。
インプラント治療費は、保険適用外であるうえに、外科的な処置になることもあり高額になるケースが多いです。
インプラントの治療費の相場について解説します。
奥歯をインプラント治療する際の治療費は、地域や歯科医院によって上下することもありますが、約30~50万円が相場です。
奥歯は力を入れるときに噛み締めたり、食べものを良く噛んで飲み込みやすくしたり、消化しやすくすることで胃腸の負担を軽減したりと重要な役割を担っています。
強い力のかかる大切な部位であるため、インプラント治療を選択するメリットは大きいといえるでしょう。
前歯1本あたりのインプラント費用の相場は奥歯より少し高めです。
奥歯に比べると、前歯では見た目の美しさが求められることから、人工歯の制作費用が高くなる傾向があります。
前歯は顔の中でも中心に位置しているため、審美性が求められる重要なパーツの1つです。
そのため、できるだけ自然で違和感のないように仕上げる必要があります。
前歯のインプラント治療では、天然歯のように自然な見た目と機能性を回復するために「歯槽骨(歯を支える骨)」と「歯茎」のベストバランスを実現させなければなりません。
前歯のインプラントは、奥歯のインプラントの治療費に比べて高額になる場合があります。
理由としては、前歯が奥歯よりも見た目が重視されることに加えて、前歯のインプラント治療の難しさが関係しています。
前歯のインプラントが難しいといわれるポイントについて解説します。
前歯のインプラントが難しいといわれるのには、骨が薄いことがあげられます。
前歯が埋まっている骨の厚さというのは、健康な人であってもハガキ1枚分程度だといわれています。
そこへインプラント体を埋め込むのが非常に難しいのです。
健康な状態でも難しいのに、前歯が失われた原因が虫歯や歯周病である場合には骨が溶けてしまっていて「ほとんど骨が残っていない」というケースもあります。
歯茎が下がるのも、前歯のインプラントが難しい理由です。
前歯にインプラントを埋める際には、骨が壊れてなくなってしまう骨吸収が起こる可能性があります。
骨吸収が起こると生じるのが、歯肉退縮という歯茎が下がる現象です。
それによってインプラントの金属部分(人口根)が露出してしまう場合があります。
また、年齢・歯垢・歯石によって歯茎が下がることもあるので、歯茎がどのくらい下がる可能性があるのかということも考えながら治療しなくてはなりません。
前歯のインプラントは、奥歯のインプラントに比べて見た目を非常に意識する必要があります。
「噛む」といった機能的なことはもちろん、見た目を自然かつ美しく仕上げるためには技術と知識、さらにインプラント治療に豊富な経験を持ち合わせているかが重要です。
前歯のインプラントには高度な技術が必要になることから、治療費に技術への対価が含まれている場合もあるでしょう。
前歯のインプラント治療では、「骨吸収」や「歯肉退縮」といったことが起こる可能性があります。
そのようなことが起こった場合、インプラントが抜けてしまうことも考えられるため、見た目の問題どころではありません。
骨吸収や歯肉退縮では、通常の手術に加えて、骨の厚みを出したり歯茎のボリュームを出したりする手術が必要です。
インプラント治療において、骨の厚みや高さが足りない場合に歯槽骨を再生する方法として、GBR(骨再生誘導法)というものがあります。
骨を増やしたい部分を「メンブレン」という人工膜で覆い、その中に自家骨(自分の骨)や人工の骨補填材を詰めて骨芽細胞の増殖を促す方法です。
自分の骨は一般的に下顎の先端や下顎の奥歯側から採取します。
インプラント治療において、歯茎のボリュームを出す方法が、FGG(遊離歯肉移植術)とCTG(結合組織(歯肉)移植術)です。
FGGは、遊離歯肉といって歯に付着していない先端部分の歯肉や歯茎を、ボリュームを出したい場所に移植することをいいます。
角化歯肉を増加させることができるため、審美性や清掃性が高まる上、歯の寿命を延ばすことが可能です。
CTGは、歯肉の硬い部分の下にある結合組織のみ移植を行って、移植元に対しては再生・移植先に対しては審美性と機能性を改善する治療法をいいます。
歯根面を覆う周囲の歯肉に対して厚みを増加させることができるので、審美的に優れた被せものを入れることが可能です。
インプラントは高額な医療費になるため、医療費控除の対象となります。
「医療費控除」という言葉を聞いたことはあるけれど、よくわからないという方に向けて解説します。
医療費控除とは、1年間に10万円以上の医療費を支払った場合に、所得税や住民税において受けることができる控除になります。
特に申請書のフォーマットなどはありませんが、年末調整では申請することができず、確定申告が必要です。
確定申告を行うことで、支払った治療費の一部が還元されることになります。
具体的な医療費控除の申請方法は以下のとおりです。
なお、控除対象の医療費には、治療費だけでなく交通費や薬代も含まれますが、駐車場は含まれませんのでご注意ください。
保険適用外の診療になるため高額になりがちなインプラントの治療費ですが、どんな支払い方法があるのでしょうか。
歯科医院によっても異なりますが、インプラントの治療費相場は1本あたり30~50万円です。
そして本数が増えるにつれて金額は上がっていきます。
一般的なインプラントの支払い方法について解説しますので、ぜひ参考にしてください。
どこの歯科医院でも、現金でのインプラント治療費の支払いは可能でしょう。
一括払いのみ可能という歯科医院が多いかもしれません。
しかし院内独自で分割払いの方法を取り入れている歯科医院もあります。
「現金払いが好ましいけれど一括で支払うのは難しい」という場合、歯科医院に相談してみると良いでしょう。
また高額な治療費を持ち歩くのが不安だという場合も歯科医院に相談してみるのがおすすめです。
銀行振込での支払い対応を選べるかもしれません。
歯科医院独自で分割払いができる場合は金利がつかないケースが多いため、手数料負担が軽減できます。
歯科医院によっては、インプラントの治療費をクレジットカードで支払うことができます。
手持ちのクレジットカードで決済できれば、新しく審査などを受ける必要もありません。
クレジットカードで支払う場合、歯科医院によっては分割払いを選択できることもあるでしょう。
歯科医院で分割払いが選択できなかった場合でも、クレジットカード会社に連絡して後から分割払いに変更することができる可能性があります。
しかし、クレジットカードで分割払いを選択した場合には分割手数料が発生するので注意が必要です。
手数料分総額が増えることになるので、確認しておきましょう。
インプラントの治療費には、歯科治療専門の「デンタルローン」での支払いに対応している歯科医院があります。
デンタルローンを提供している会社が治療費を立て替えて歯科医院に支払ってくれる仕組みです。
その後は毎月分割でデンタルローン会社に治療費を返済していくことになります。
契約は「本人・デンタルローン会社・歯科医院」の三者間です。
歯科医院と提携しているデンタルローン会社を使用することになるため、自分でデンタルローン会社を選ぶことはできません。
デンタルローンを利用するには、審査に通る必要があります。
アルバイトやパートなど継続した収入が不安定だとみなされた場合「保証人」が必要となるかもしれません。
デンタルローンでインプラントの治療費を支払う場合、クレジットカードと同様に金利手数料が発生するので注意してください。
クレジットカードやデンタルローンは、歯科医院によって利用できる会社が決まっているケースがほとんどです。
現金以外の方法を選択する場合には、金利手数料がかかります。
そこで手数料がどのくらいかかって、治療費の総額がどのくらいになるのかあらかじめ計算しておきましょう。
一般的にクレジットカードの金利手数料は15%程度、デンタルローンの金利手数料は5~8%で、デンタルローンの方が金利手数料は低く設定されています。
支払方法の取扱いについては、歯科医院に相談してみましょう。
前歯を失った場合の治療法、インプラントで注意することなどについて解説してきました。
見た目の自然さや美しさから、前歯の治療にはインプラントの選択が適しています。
他の歯を傷つけないため、機能性でも適しているといえるでしょう。
歯が失われた部分をそのままにしておくと、歯並びや噛み合わせにも徐々に影響を及ぼすことにもなります。
そこで前歯を失ってから、できるだけ早く治療をはじめることが大切です。
治療が完了するまである程度の期間がかかるインプラントですが、前歯の場合は必ず仮歯によって見た目を整えるので心配ありません。
ご自身の前歯のインプラントが難しいケースなのか、そうでないかも含めて、まずは歯科医院へ相談してみることをおすすめします。
監修:理事長/齋藤和重