2023/12/08
歯がすべてなくなってしまった場合、昔なら総入れ歯しか選択肢がありませんでした。
現在は総入れ歯だけでなく、インプラント治療という選択肢が増えています。
身体的・経済的な理由によって、最適な治療法は人それぞれによって異なるものです。
この記事では、後悔しない治療法を選択できるよう、歯がすべてなくなってしまった際の治療法について、それぞれのメリット・デメリットなどを解説していきます。
歯をすべて失ってしまった場合、これまで多くの人は総入れ歯を選択してきました。
総入れ歯とは、上下どちらか、または両方のアゴに自分の歯がまったく無い状態で使用する、人工歯による治療のことです。
床(しょう)といわれる合成樹脂でできたピンクの土台を歯茎に見立て、その上に人工歯を並べます。
床が合成樹脂以外で作られたものを始め、総入れ歯の種類はさまざまで、口腔内の状況や入れ歯の目的、個人の希望に応じて、適切な入れ歯を選択することが可能です。
例えば、床がコバルトクロムやチタン、ゴールドなどの金属素材でつくられた金属床の総入れ歯や、歯茎にあたる部分の素材を薄くて柔らかいシリコンに変更し負担や刺激を抑えられるよう製作された総入れ歯があります。
また歯科医院によっては、入れ歯の型どりから完成までのすべてを歯科医師が請け負う、フルオーダーメイドも可能です。
その場合は使用する素材にもこだわり、悩みや要望を歯科医師に相談しながら口腔内の状態も総合的に診断して製作に反映することができます。
インプラントの「オールオン4」とは、片アゴあたり最小4本のインプラントを使って支える方法です。
前歯から奥歯までが連結して一体となった人工歯を装着することで、歯のない部分を補うことができます。
手術を行ったその日にインプラントの仮歯を装着できる最先端の治療法です。
従来のインプラントよりも少ない本数で多くの歯のない部分を補うことができるため、治療期間も短くてすむという特徴があります。
ここ数年の間に目覚ましく進化しており、多くの人に利用されつつある方法です。
インプラント「オーバーデンチャー」とは、入れ歯の固定に数本のインプラントを用いる方法です。
ロケーターアタッチメントと呼ばれる維持機構のついたパーツを装着することで、入れ歯とインプラントを力強く結合させて入れ歯を固定します。
インプラントで支えられて入れ歯が安定するためズレることが少なく、しっかりと噛むことも可能です。
噛む力が強くなって保険適用のプラスティックの入れ歯では割れてしまう可能性もありますので、オーバーデンチャー専用の強度がある入れ歯を使用することになります。
従来の総入れ歯では入れ歯が動いてしまってしっかり噛むことができなかったり、歯茎が痛くなってしまったりといった不快な症状を感じる人も多いでしょう。
オーバーデンチャーは、そんな不快な症状を解消してくれる、画期的な治療法といえます。
すべての歯が無くなってしまった場合に選択できる治療法が「総入れ歯・オールオン4・オーバーデンチャー」です。
その治療方法やかかる費用、平均的な寿命について解説します。
●治療方法
●費用
●寿命(耐用年数)
治療法を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
<総入れ歯>
総入れ歯の治療では、歯茎の型を取って模型を作り、プラスティックと赤いロウでできた入れ歯の原型となる咬合床を製作します。
咬合床を取り付けて口全体の状態を調べながらロウを加工していき、噛む位置を調整し嚙み合わせを決め、入れ歯を設計するのが一般的な流れです。
入れ歯の設計は、噛み合わせを再現する機械に模型と咬合床を取り付けて行います。
設計をもとに人工歯を並べ、色合いを見ながら入れ歯を製作しますが、製作途中の入れ歯の適合の確認も必要です。
入れ歯が完成したら装着し、噛み合わせ等の最終調整を何度か行い治療を終えます。
治療を終えても、歯科医院での定期的なメンテナンスと自宅での毎日のお手入れは必要です。
<オールオン4>
インプラントのオールオン4の治療では、レントゲン・CT撮影・治療計画の作成・口腔内の型取り・嚙み合わせの確認・手術後の仮歯の作成などの検査と準備が必要です。
根が残っていて必要な場合は抜歯を行い、インプラント埋入の手術をします。
インプラントを埋入した後、仮歯の調整をし、特に問題がなければ仮歯の装着をして手術終了です。
約6か月後に仮歯から最終ブリッジを装着して、治療を終えます。
治療を終えてオールオン4を装着した後も、歯科医院による定期的なメンテナンスは必要です。
<オーバーデンチャー>
オーバーデンチャーの治療の流れは、インプラントを埋入するところまではオールオン4と同様です。
オーバーデンチャーでは、アゴの骨に2~4本の入れ歯を支えるためのインプラントを埋入します。
埋入したインプラントにアタッチメントを取り付け、入れ歯には留め具を埋め込みます。
入れ歯を乗せるとキャップの摩擦力によって入れ歯がしっかり固定されて安定する仕組みです。
オーバーデンチャーの固定方法には、大きく以下の3つあります。
【マグネットタイプ】もっとも安定性が高く大きなデメリットのない固定方法
【ボールタイプ】ボールアバットメントオーバーデンチャーといい、主に下アゴに使われる固定方法
【バータイプ】上下のアゴに歯が無いとき、左右対称にインプラントを埋入し、金属バーで橋渡しをして上から入れ歯を装着する方法
総入れ歯の費用は、保険適用のものであれば2~3万円前後です。
金属床の総入れ歯の場合、コバルトクロム(片アゴ):50万円~、チタン(片アゴ):62万円~、ゴールド(片アゴ)69万円~と保険適用の入れ歯に比べて高額になります。
シリコンの総入れ歯の場合は、金属床の入れ歯に比べると片アゴ24万円~と安価です。
しかしシリコンの経年劣化により噛み合わせや高さなどが変化してしまうデメリットがあります。
オールオン4治療にかかる費用は、約150万円~400万円が相場です。
自由診療であるため、口腔内の状態や医療施設によって異なります。
オーバーデンチャーの治療費相場は、約40万円~150万円です。
金額は口腔内の状態やインプラントの埋入本数や固定方法によって異なります。
総入れ歯の寿命は、プラスティック製の場合は3年~5年、金属製の場合は5年以上です。
オールオン4の寿命は通常のインプラントとあまり変わらず、材質から見ても半永久的に使えるといわれています。
オーバーデンチャーも支えている部分はインプラントなので、通常のインプラントと寿命は変わりません。
総入れ歯には以下のようなメリットがあります。
総入れ歯のメリットは、お手入れが簡単なことです。
取り外せるので清掃も簡単で、衛生的に保てます。
落として破損したり、排水溝に流してしまったりしないよう注意しつつ、入れ歯専用のブラシで洗いましょう。
歯磨き粉を使用する必要はなく、柔らかいところはスポンジやガーゼでやさしくこする程度に洗います。
寝る前に洗い、洗った後は水の中に入れて保管します。
清潔を保つため、水は毎日取り換えてください。
入れ歯洗浄剤は3日に1度程度使用し、入れ歯を口に装着する前に口腔内を水ですすぐようにしましょう。
インプラントのように外科的な手術を必要としないので、総入れ歯には身体的な負担がありません。
ただし、入れ歯の調整が完了するまでは、歯茎にあたるなどの痛みが生じる場合があります。
保険適用で作れるのが総入れ歯のメリットです。
金属やシリコンを使用した自由診療の入れ歯もあります。
しかし保険適用の入れ歯なら、費用を抑えられるでしょう。
総入れ歯には以下のようなデメリットがあります。
総入れ歯は噛みにくさがあるのがデメリットです。
お肉や果物などの固い食べ物は噛みにくさを感じることがあるでしょう。
天然歯と同じように噛むことは難しいです。
調整が済むまでは、レタスなどの薄い食べ物にも噛みづらさを感じたり、歯茎との隙間に入った食べかすで痛みを感じたりすることもあります。
審美性に欠けるのも総入れ歯のデメリットです。
保険適用のレジンの入れ歯は審美性に欠けるため、他の人から見ても入れ歯だと気づかれてしまうかもしれません。
総入れ歯は、入れ歯と歯茎の間に隙間があると空気が抜けてしまうため、発話のしづらさを感じることが考えられます。
調整をして慣れていくことで、ほとんどの場合は1週間ほどを目安に解決するでしょう。
保険適用外の総入れ歯だと、治療費が高額であるのもデメリットです。
自由診療で作製した入れ歯であれば、人工歯の部分も硬質レジンやセラミックなどの素材で作製することができます。
そのため天然歯に近い見た目で、他の人からも気づかれにくいでしょう。
ただし金属製やシリコン製など自由診療の入れ歯は費用が高額です。
オールオン4には以下のようなメリットがあります。
オールオン4は天然歯に近い嚙み心地なのがメリットです。
オールオン4は、土台となるインプラントがしっかりとアゴの骨に埋まっています。
しっかりと固定されるので、入れ歯やオーバーデンチャーに比べても非常に高い安定性の治療法です。
入れ歯ではよく噛むことができなかった硬い食べ物なども、オールオン4ならば天然歯に近い噛み心地で食事を楽しむことができるでしょう。
噛み合わせはもちろん、人工歯の歯並びや形や色なども個々に合わせて作成されるので、違和感のない自然の見た目に仕上げられるのがオールオン4のメリットです。
審美性に優れたオールオン4治療法により、口元を気にすることなく、会話に違和感もなく過ごすことができるでしょう。
オールオン4は固定式なので、着脱の手間がありません。
外出はもとより、旅行にもお手入れや管理を気にすることなく出かけられます。
痛みが起きないのもオールオン4のメリットです。
オールオン4はしっかり固定されています。
歯茎との隙間に食べ物が挟まってしまって痛みを感じたり、入れ歯が合わずに歯茎にあたって痛みを感じたりするなどの不快な症状が起きることがありません。
骨の吸収を防げるのもオールオン4のメリットです。
アゴの骨の中には、歯根が埋まっている箇所にあたる歯槽骨という骨があります。
ここは上下の歯が噛みあうことで刺激を受け、健康な状態を保っているのです。
歯が抜けてそのままの状態が続くと刺激がなくなるため、骨が吸収されていくという現象が起こります。
しかし、オールオン4は天然歯に近い構造で埋まっているため、骨吸収を抑える効果が期待できるでしょう。
オールオン4には以下のようなデメリットがあります。
オールオン4は、インプラントを埋め込むための手術が必要です。
そのため身体的に負担がかかるでしょう。
オールオン4は保険適用外です。
自由診療治療のため、治療費が高額になるのは大きなデメリットだといえるでしょう。
治療が適用できない場合があるのも、オールオン4のデメリットです。
アゴの骨が痩せてしまっていると、通常のインプラントでは骨移植が必要になります。
しかしオールオン4の場合は骨の厚みのある部分を選んでインプラントを埋め込むことが可能です。
ただし歯周病が進行していたり、糖尿病などの全身疾患があったりすると、オールオン4が適用できない場合があります。
インプラントには定期的なメンテナンスとセルフケアが必要だというデメリットもあります。
インプラントと歯茎の間に歯垢がたまって歯周病菌が繁殖すると、インプラント周囲炎によってインプラントがダメになる可能性があるのです。
インプラント周囲炎を防ぐためには、日々のメンテナンスが欠かせません。
また歯科医院での専門的なメンテナンスを定期的に行うことが必要です。
オーバーデンチャーには以下のようなメリットがあります。
オーバーデンチャーは違和感が少ないのがメリットです。
通常の入れ歯とは違い、インプラントによってしっかりとした土台のもとに固定してあります。
そのためガタつきなどの違和感が少ないです。
入れ歯では噛むのが難しかったものも噛み切れるようになります。
オーバーデンチャーは自然に近い見た目なのも大きなメリットです。
薄く、小さい入れ歯にできるため、着け心地も見た目も自然に近い仕上がりにできます。
オーバーデンチャーは取り外しが可能なので、お手入れがしやすいのもメリットです。
インプラントの周りのブラッシングも、ロケーターの周囲の汚れを落とすことができれば問題ありません。
オーバーデンチャーはオールオン4より費用が抑えられるのもメリットです。
もちろん保険適用の入れ歯よりは高額になります。
しかし先述のとおりオールオン4よりは費用が抑えられるでしょう。
オーバーデンチャーには以下のようなデメリットがあります。
インプラントを埋め込むため手術が必要になるがオーバーデンチャーのデメリットです。
外科的手術なので身体的負担があります。
オーバーデンチャーは保険適用外です。
自由診療治療なので費用は高額になります。
治療が適用できない場合があるのも、オーバーデンチャーのデメリットです。
オールオン4と同様、歯周病や糖尿病などの全身疾患などにより、治療が適用できない場合があります。
オーバーデンチャーは定期的なメンテナンスとセルフケアが必要なのもデメリットです。
治療後も歯科医院での専門的なメンテナンスと経過観察が必要になります。
オーバーデンチャーは入れ歯に近いものです。
そこで「入れ歯」することに抵抗がある人には向きません。
オーバーデンチャーは、オールオン4より噛む力が弱いのがデメリットです。
インプラントに支えられているためズレにくいという特徴があります。
しかし通常のインプラントやオールオン4と比較すると噛む力は弱いので注意してください。
本記事では、すべての歯が無くなった場合の治療法について解説してきました。
選択した治療で後悔や失敗をしないためにも、総入れ歯・オールオン4・オーバーデンチャーのそれぞれの違いやメリット・デメリットを把握しましょう。
そのうえで、望むかたちに近い治療法を選んでください。
東京都品川区YDC審美インプラント治療専門ガイド
監修:医療法人スマイルパートナーズ 理事長/齋藤和重
『山手歯科クリニック大井町』
住所:東京都品川区東大井5丁目25−1 カーサ大井町 1F
『山手歯科クリニック戸越公園』
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