2023/11/09
失った歯の代わりとなり、ものを噛んだり見た目を良くしたりできるのがインプラントです。
しかしインプラントには寿命があります。
インプラントのお手入れ方法が適切でなければ、寿命が短くなってしまうのです。
この記事ではインプラントのメンテナンス方法について解説します。
また、インプラントをメンテナンスしなかった場合にどのようなトラブルが起こるのかについてもまとめました。
インプラントの寿命を少しでも延ばしたいのであれば、この記事を参考に適切なメンテナンスを行なってください。
失った歯の代わりとなるインプラントですが、埋め込んだら永久に使えるというわけではありません。
インプラントの寿命は埋め込んだ場所や口腔内の状態によっても異なります。
寿命としては、10〜15年程度が平均です。
しかしインプラントの10年後の残存率は9割を超えると言われています。
入れ歯やブリッジと比較すると、インプラントの寿命は長めです。
インプラントの寿命は10~15年といっても、あくまでも平均です。
お手入れの仕方によって、10年も持たずに寿命を迎える場合もあれば、20年以上使い続けられる場合もあります。
つまりインプラントの寿命を長く延ばせるかは、ケア次第で大きく変わってくるのです。
お手入れが十分でない場合は様々なトラブルを引き起こし、インプラントの寿命が短くなるでしょう。
では、インプラント治療後にしっかりお手入れしなかった場合、どのようなトラブルを引き起こしてしまうのでしょうか。
ケアが十分でなかった場合に起こり得るリスクについて説明します。
手入れが不十分だったときに起こるのが「インプラント周囲粘膜炎」です。
インプラント周囲粘膜炎とは、インプラント周囲の粘膜のみに炎症が起こる症状で、天然歯で言う歯肉炎や歯周炎のような状態になります。
インプラントの周りに歯垢が溜まると引き起こされ、歯茎が腫れたり出血したりする場合がありますので注意しましょう。
インプラント周囲粘膜炎が悪化し、インプラント周囲の粘膜から歯槽骨にまで広がった状態が「インプラント周囲炎」です。
歯周病と似たような症状で、歯茎から出血したり、膿が出たりする場合があります。
インプラント治療後は、このインプラント周囲炎になるリスクが高いので注意が必要です。
重篤なケースだと歯茎が痩せてしまい、インプラントが脱落する可能性があります。
インプラント周囲炎は自覚症状がほとんどなく、気付かないうちに進行して完治するのが難しくなるのが特徴です。
インプラントのお手入れを怠ると、他の健康な歯にまで危険が及び寿命が縮むので注意しましょう。
もし、インプラントに汚れが溜まれば、隣接する天然歯が虫歯や歯周病になってしまう可能性があるのです。
インプラント自体は虫歯にはならないため油断しがちですが、周囲の歯は虫歯になるということを忘れてはいけません。
お手入れを怠ると、保証が受けられなくなるのも注意点です。
インプラント治療には、一般的に保証期間が設けられています。
埋入後に不具合があった場合は、保証期間内であれば無料で対応してもらえるのです。
しかし、不具合の原因がメンテナンス不足にあった場合は保証に対応していないケースが多く、その場合のインプラントの交換は自由診療のため高額になるでしょう。
治療後に不具合があった場合に保証をしっかりと受けられるようにするためにも、インプラントのお手入れは欠かせません。
治療後にできるだけインプラントを長持ちさせたいのであれば、自宅でのお手入れをしっかり行う必要があります。
では、具体的にどのような方法でお手入れすれば良いのでしょうか。
インプラントの寿命を延ばすためのセルフケアの方法について詳しく説明します。
歯ブラシを使った日々の歯磨きは、インプラントを守るために必要不可欠です。
表面だけではなく、歯茎との境目なども隅々まで丁寧に歯磨きをして、歯垢が残らないようにしましょう。
歯ブラシの硬さは様々ありますが、「かため」の歯ブラシで磨くと、インプラントを傷つけてしまう恐れがあります。
歯ブラシの硬さは歯茎に問題がなければ「ふつう」を選び、痛みや炎症がある場合は「やわらかめ」を選ぶのがおすすめです。
歯磨きをする際は歯磨き粉を使うのが一般的です。
しかし研磨剤入りの歯磨き粉は汚れを除去する効果が高いものの、インプラントを傷つける恐れがあります。
そのため、低研磨、もしくは研磨剤無配合の歯磨き粉を選ぶと良いでしょう。
迷った場合は担当の歯科医師に相談するようにしてください。
歯間ブラシというのは、歯間や歯と歯肉の間の汚れを清掃する道具です。
先端がブラシ状になっており、インプラントと隣接する歯との間の汚れを効率良く取り除きます。
また歯間清掃の他にも歯肉の状態をチェックするという役割もあるのです。
歯間ブラシによって出血の有無が確認でき、インプラント周囲炎の早期発見・早期治療が期待できます。
デンタルフロスは、細い繊維を束ねて糸状にしたもので、歯間ブラシと同様に歯間や歯と歯肉の間の汚れを清掃する道具です。
フロスの糸を歯と歯の間に通し、優しく前後に動かして汚れを取り除きます。
・隙間が広い部分・・・歯間ブラシ
・隙間が狭い部分・・・デンタルフロス上記のように使い分けるのがベストです。
マウスウォッシュは、「うがい薬」「洗口液」などとも呼ばれる、口腔内の細菌を殺菌する液体です。
歯磨きなどのセルフケアを行った後、マウスウォッシュを口に含んですすぎます。
歯磨きやフロスでは十分に落としきれない汚れは、マウスウォッシュで落としましょう。
インプラント周囲炎のリスクを下げることが可能です。
インプラント後のお手入れでは、歯科医院で定期的なメンテナンスを受けることも重要です。
では、歯科医院では具体的にどのような処置が受けられるのでしょうか。
ここでは、歯科医院で行うメンテナンス方法を詳しく紹介していきます。
歯科医院でのメンテナンスでは、はじめに口腔内の状態を目視で確認します。
チェックするのは主に以下の項目です。
・上部構造とインプラント体に不具合・破損などはないか ・プラントはぐらつかないか ・歯茎に炎症はないか ・歯周ポケットの深さは適正か ・噛み合わせに問題はないか ・歯垢や歯石はないか 早期発見・早期治療ができれば、インプラントの重大なトラブルも回避できます。目視で確認できない部分については、レントゲン検査を行って確認する場合もあります。
レントゲン検査で確認できるのが次の項目です。
・歯槽骨に炎症がないか ・骨吸収の状態はどうか さらにインプラント周囲の歯に虫歯がないかなど、インプラント以外の歯の状態も確認します。もし、上顎の奥歯にインプラントを埋め込んだ場合は上顎洞炎を引き起こすリスクもあるため、レントゲンで詳しく確認する場合もあるでしょう。
歯科医院ではブラッシング指導も行われます。
日々の丁寧なブラッシングによってインプラントを長く使えるようになるからです。
人にはそれぞれ歯磨きの癖があります。
そのため磨ききれない箇所がある場合が多いのです。
歯科医院では磨き残しが多い部分をチェックでき、正しい磨き方や清掃器具について指導してもらえます。
セルフでの適切なケアができるようになると口腔内を清潔に保てるため、インプラントの寿命も延びるでしょう。
歯科医院では、PMTCが行われます。
PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)とは、歯科専門家による専用の機械使った歯のクリーニングのことです。
歯ブラシでは届きにくい部分の汚れや歯垢、着色汚れなどを取り除けます。
歯垢は歯ブラシでも取り除けますが、歯垢が石のように固まった「歯石」となると、自力で取り除くのが難しくなるのです。
歯科医院ではPMTCによって歯石を除去する処置をしてもらえるので、健康な口腔内を目指せます。
メンテナンスを徹底すれば、トラブルを起こすリスクを回避できるでしょう。
しかしインプラントや周囲の歯を守るには、メンテナンス以外にも注意しなければならないことがあるのです。
詳しく説明しますので、インプラント治療を行った方や検討している方は、ぜひご確認ください。
メンテナンス以外にも、インプラントでは嚙み合わせの改善が必要です。
噛み合わせが悪ければ、一部の歯に負担がかかり、寿命を縮めてしまいます。
嚙み合わせの改善にはマウスピースを装着するなど、様々な対策が考えられるでしょう。
歯科医院にて相談し、適切に対処してください。
インプラントでは喫煙や節煙も必要になります。
喫煙には様々な健康被害が報告されていますが、インプラント治療に関しても同様です。
タバコを吸う習慣がある場合、インプラント施術部位に以下のような悪影響を及ぼすリスクがあります。
・術中・術後の感染症リスクが高まる ・インプラントが骨と結合しにくくなる ・インプラント周囲炎や歯周病のリスクが高まる 喫煙はインプラントの寿命を縮める大きな原因になります。インプラントを守るためにも、禁煙や喫煙回数を減らすなどの対策を考えましょう。
歯ぎしりや食いしばりは、インプラントや天然歯に大きな負担がかかる危険な癖です。
天然の歯には、歯と歯槽骨の間に歯根膜という薄い膜があります。
これにより、クッション効果で噛んだ時にかかる力を吸収・分散させているのです。
しかしインプラントには歯根膜がないため、直接負担がかかり、結果的に寿命を縮めてしまう可能性が高まります。
歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合はナイトガードを活用するなどの対策が必要となるでしょう。
インプラント治療後はバランスの良い食事を取るのも大切です。
歯と身体の健康を良くし、免疫力を高めましょう。
結果的に、インプラントを長持ちさせることにもつながります。
バランスの良い食事を心がけ、健康的な生活習慣を送ってください。
インプラントの寿命を長くするためにも、違和感があったらすぐに歯科医院を受診しましょう。
寿命を縮める原因となるインプラント周囲炎は、自覚症状がほとんどないのが特徴です。
気づかないうちに症状が悪化して取り返しがつかなくなる場合があります。
早期発見・早期治療によって、インプラントの寿命は長くなる可能性が高いでしょう。
口腔内に違和感があったら、定期検診の時期でなくても歯科医院を受診してチェックしてもらってください。
インプラント治療では、信頼できる歯科医院を選ぶのも大切です。 ・埋入したインプラントがうまく結合しない ・インプラントが適切な位置に埋入されない 上記のような失敗や不具合は、インプラントの寿命を縮める可能性があります。
インプラント治療は、虫歯や歯周病治療などに比べると専門性が高い治療です。
失敗や不具合を防ぐためには、信頼できる歯科医院を選びましょう。
数ある歯科医院の中からどのような点に気を付けて歯科医院を選んだらよいのでしょうか。
歯科医院を選ぶ際は、以下のポイントに注目してみましょう。
・カウンセリングが丁寧か ・事前説明が徹底しているか ・インプラント治療のメリットだけでなくデメリットも説明してくれるか ・インプラント治療の実績が豊富か ・設備が整っているか ・口腔内の治療に精通しているか 実際に治療を受けた人の口コミを参考にしたり、カウンセリングを受けて確かめたりするのがおすすめです。
本記事ではインプラントのメンテナンス方法について解説しました。
口腔内を清潔に保たなければ、インプラント周囲炎などによってインプラントの寿命が縮まります。
それだけではなく、他の健康な歯の寿命が縮まったりするリスクも高まるのです。
インプラントのお手入れ方法には、セルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスがあります。
どちらも適切に行えば、インプラントをより長く使うことができるでしょう。
この記事を参考にしつつ、しっかりメンテナンスを行ってください。
監修:理事長/齋藤和重