2023/08/07
歯を失った場合の治療法としてインプラント治療は人気です。
入れ歯やブリッジと比較して、インプラントは機能性や審美性に優れています。
しかし、何らかの原因でインプラントを除去しなければならないケースもあるので注意が必要です。
この記事では、治療後にインプラントを除去しなければならなくなる原因と除去する方法について解説します。
他にも、除去とならないために気をつけることについてもまとめました。
インプラント治療を検討している方は、ぜひ内容をご確認ください。
インプラントの寿命は10~15年です。
顎の骨と結合するインプラント体が外れたときにインプラントの寿命が訪れます。
しかしそれ以前でも以下のような理由でインプラントを除去しなければならない可能性があるのです。
・インプラント体の破損
・インプラント周囲炎
・アレルギー症状
・術後の神経麻痺
・手術の不具合
・噛み合わせ
・上顎洞炎
治療後にインプラントを除去する必要があるケースについて詳しく解説します。
インプラント体が破損すると除去が必要です。
インプラントは以下の3つに分かれています。
・インプラント体(人工歯根)
・被せ物(人工歯/上部構造)
・アバットメント
上部構造が欠けたり破損したりした場合は作りなおしができるケースが多いでしょう。
しかしインプラント体が破損した場合は修理するのが難しく、除去しなければならなくなるのです。
周辺組織に炎症が起こるインプラント周囲炎でも除去が必要になる場合があります。
インプラント周囲炎の初期段階が「インプラント周囲粘膜炎」です。
インプラント周辺の歯茎に赤みや腫れが生じるものの、ほとんど自覚症状がありません。
気付いたときには症状が悪化してインプラント周囲炎になっている場合もあるのです。
インプラント周囲炎になってしまうと、腫れや出血、周囲の骨が溶けるなどの症状が考えられます。
予後が不良と判断される場合は、インプラント体を除去しなければならなくなるでしょう。
インプラント周囲炎のリスクを高める原因には、以下のものがあります。
・治療後のメンテナンスが不足している
・過去に歯周病にかかったことがある
・全身疾患を抱えている
・歯並びが悪い
・喫煙習慣がある
・常に口呼吸をしている
大前提として、インプラント周囲炎の大きな原因となるのは歯垢や歯石です。
そして治療後に歯磨きを丁寧に行っていなければ歯垢や歯石が蓄積して症状を引き起こしてしまいます。
場合によってはインプラントを除去する必要があるでしょう。
チタンアレルギーのある方は、インプラントを除去しなければならなくなる恐れがあります。
インプラント体の素材は、人体と馴染みやすく、金属アレルギーが起きにくいチタンです。
金属アレルギーであってもインプラントは問題ないと言われています。
被せ物には以下のような素材を使うとアレルギーのリスクが低いでしょう。
・オールセラミック
・ハイブリッドセラミック
・ジルコニア
ただし、チタンアレルギーだとインプラントを使い続けるのは難しくなります。
チタンや金属アレルギーの疑いがある方は、医師に相談のうえでパッチテストなどの検査を受け、リスクについて理解してから治療を受けてください。
術後に神経麻痺が起きた場合も、インプラントの除去が必要になるでしょう。
顔周りには数多くの神経があります。
歯根の近くの下の顎にあるのが下歯槽神経です。
下の顎にインプラント体を埋入すると、ごくわずかですが治療後に神経麻痺引き起こす可能性があります。
インプラント治療においては細心の注意を払いますが、万が一神経を損傷して神経麻痺が確認されたら、インプラントの除去が必要です。
手術による不具合も除去の原因です。
多くは成功しているものの、インプラント治療が当たり前になってきた近年では、失敗や不具合の症例数も増えてきています。
埋入したインプラントがうまく結合しなかったり、インプラントが適切な位置に埋入されなかったりと様々な失敗が考えられます。
インプラント治療の失敗を防ぐためには、適切な歯科医院選びが必要不可欠です。
噛み合わせが悪いのも除去の原因の1つです。
もし嚙み合わせが悪いと一部の歯に負担がかかってしまい、インプラントの寿命を縮めてしまいます。
インプラントに噛み合わせの原因があるときに行うのは、基本的には上部構造の調整です。
それでも噛み合わせが改善されない場合は、インプラントの除去が必要になります。
上顎洞炎でインプラントを除去するケースもあります。
上顎のインプラント治療をする場合、上顎洞炎のリスクがあるので注意しなければなりません。
上顎洞炎はインプラントを埋入する際に、上顎洞と呼ばれる空洞へと人工歯根が突き出て生じます。
万が一、インプラント治療後に上顎洞炎を発症した場合は、インプラントを撤去して適切な治療を受けなければならなくなります。
インプラントを撤去する方法は、以下2種類のどちらかに該当するかで変わります。
・骨がある場合
・骨吸収が進んでいる場合
万が一、インプラント周囲の骨が吸収している場合、骨を削らずに軽く引っ張って抜くことが可能です。
通常の骨がしっかりある場合では、局所麻酔のもと歯茎を切開して骨を露出させ、状態によっては骨を多少削って摘出します。
インプラント除去にかかる費用は、保険適用内か適用外かによって大きく異なります。
保険適用外でインプラント摘出術を受ける場合、自由診療となるため費用は歯科医院によってバラつきがあるでしょう。
保険適用内と保険適用外それぞれのケースについて説明します。
保険診療でインプラント除去するためには、インプラントを埋入した歯科医院以外の施設で治療を受ける必要があります。
さらに、摘出前のレントゲン画像を撮影しておかなければなりません。
これらの条件が揃えば、「歯科用インプラント摘出術」という保険適用内の治療が受けられるのです。
保険診療での歯科用インプラント摘出術は、インプラント体1本あたり460点(4600円)が割り当てられて、3割程度の負担となります。
ただし、骨を削る治療やレントゲン撮影料などは別途負担です。
インプラントの除去を保険適用外で行う場合は全額自己負担です。
歯科医院によっては非常に高額な費用がかかる場合があります。
不安な方はインプラント治療を始める前に費用について確認しておくと良いでしょう。
歯科医院によっては保証制度を設けている場合もあります。
インプラントの除去後には、再びインプラント治療を受けられるのでしょうか。
インプラントの再手術ができる場合とできない場合について詳しく説明します。
インプラントを除去した原因が解消され、除去したインプラントの周囲に骨がしっかりと残っている場合であれば、再びインプラント治療を受けることは可能です。
インプラントの再手術ができないケースは以下の通りです。
・除去したインプラントの周囲に骨がしっかりと残っていない
・炎症がおさまっていない
・歯ぎしりや食いしばりの癖がある
・喫煙している
喫煙や歯ぎしりなどがあるからといって、必ずしも再手術ができないとは限りません。
ただしインプラントの再手術となると大かがりな治療が必要です。
インプラントに悪影響を及ぼすものは排除しておくのが望ましいでしょう。
歯を失った場合の治療法として、インプラントの他にブリッジや入れ歯があります。
万が一、インプラント除去後に再手術が不可能となった場合、これらの方法で失った部分を補う必要があるかもしれません。
それぞれの特徴を理解しておくと選択肢が広がりますので、詳しい説明をご覧ください。
ブリッジは、歯を失った部分の両隣の歯を削り、それを土台にして一体型の被せ物を装着する治療法です。
歯を削るだけなので手術をすることがなく治療ができ、保険適用も可能となります。
ただし、隣接する歯がない場合は適用できません。
入れ歯は、歯がなくなった所の歯と歯茎の形を作って補う、取り外しが出来る装置です。
一部の失った場所だけを補う部分入れ歯と、すべての歯を失った場合に使用する総入れ歯があります。
保険適用も可能となりますが、入れ歯ではインプラントのようにしっかりと噛むのは難しいでしょう。
口腔内で問題が生じた場合、せっかく治療したインプラントを抜かなければならない可能性もあります。
インプラントを除去すると、歯茎が大きく失われた状態になるため、再手術が難しくなるケースが多いです。
除去しなくて済むよう、治療後どのような点に気をつけるべきかを解説します。
インプラントを除去しなくて済むよう、日々の歯磨きを徹底しましょう。
インプラントの清掃がきちんと行われていなければ、インプラント周囲炎が起こります。
予防するためには、日々のメンテナンスが必要不可欠です。
歯垢(プラーク)は歯ブラシで丁寧に磨けば落ちます。
毎日丁寧にブラッシングして、歯垢を除去しましょう。
歯ブラシの他に、デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助清掃用具を使用すれば磨き残しを減らせるのでおすすめです。
健康な状態を保つためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。
治療後も歯科医院に通ってメンテナンスを受けましょう。
インプラント歯周炎は、痛みなどの自覚症状がないケースが多いため自分では気付きにくいという特徴があります。
しかし定期検診では異常がないかチェックしてもらうことが可能です。
さらに、専用の器具を使って歯をクリーニングしてもらえます。
歯ブラシでは届きにくい部分の汚れや、なかなか落とすことができない歯石や着色汚れを取り除けるというメリットもあるのです。
インプラントの除去を避けるためにも、歯ぎしりや食いしばりを改善しましょう。
歯ぎしりや食いしばりなどの癖は、インプラントに過度の負担がかかります。
そして、インプラント埋入部分の骨吸収が起こる可能性が高くなるのです。
インプラント治療を検討している場合や、インプラントを除去した後に再治療をする場合は、これらの癖を改善したうえで治療に臨むのが良いでしょう。
インプラントの除去を防ぐためにも禁煙を考えましょう。
喫煙は歯周病やインプラント歯周炎になる可能性が高まります。
また、タバコに含まれるニコチンは血流を悪くし、インプラントを支える歯茎や骨に必要な栄養が行き渡らず、弱って痛みを伴う場合があるのです。
インプラント治療には審美性が高いというメリットがあります。
タバコを吸うことで見た目も損なわれてしまうので、インプラント治療後は喫煙を控えてください。
インプラント治療は、適切なインプラント専門医を選ぶのも大切です。
治療は、歯科医師の資格を持っていれば誰でも行えます。
しかし虫歯や歯周病治療などに比べると非常に専門性が高い治療となるため、誰でも簡単にできる治療ではありません。
インプラント治療は医師によって差が出る治療法なのです。
治療の失敗や不具合を防ぐためには、適切な歯科医院選びが必要になります。
・カウンセリングが丁寧か
・事前説明が徹底しているか
・インプラント治療の実績が豊富か
・設備が整っているか
・口腔内の治療に精通しているか
上記のポイントに注目して適切な歯科医院を選んでください。
本記事では、インプラントを除去しなければならなくなる原因と除去する方法について解説しました。
治療後は次のような原因によって除去しなければならなくなる可能性があります。
・インプラント体の破損
・インプラント周囲炎
・アレルギー症状
・術後の神経麻痺
・手術の不具合
・噛み合わせ
・上顎洞炎
インプラントの再手術となると難しい治療になるケースが多いです。
トラブルの原因を排除できれば、インプラントを長持ちさせられます。
そのため日々のメンテナンスなどを徹底していきましょう。
監修:理事長/齋藤和重