2023/07/06
何らかの事情で歯を失った場合でも、見た目や噛み合わせを回復できるのがインプラント治療です。
このインプラントを埋入する手術には、1回法と2回法という術式があるのをご存知でしょうか。
この記事では、インプラントの術式とそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。
1回法と2回法ではどのような流れでインプラント治療が進んでいくのかを詳しく説明しているのでご覧ください。
インプラント治療を成功させるためには、それぞれの骨や口腔内の状態に合った治療法を選択する必要があります。
この記事をご覧いただき、参考にしていただけたらと思います。
そもそもインプラント治療とはどのような治療法かと言うと、虫歯や歯周病など何らかの原因で歯を失った場合に、金属製の人工歯根を埋め込み、人工歯を装着する方法です。
インプラントは歯があったときと同じような見た目・噛み心地に回復するのを治療の目的としています。
歯を失ったとしてもインプラント治療を行えば、見た目も良くなりしっかり噛めるようになるでしょう。
歯を失った場合の治療法としては、インプラント治療の他に「入れ歯」や「ブリッジ」などがあります。
インプラント治療は周囲の歯を削らずに治療ができ、審美性や機能性に優れているため、他より人気が高い治療法です。
顎の骨にしっかりと固定されるインプラントですが、どのような構造になっているのでしょうか。
インプラントは、以下3つのパーツで構成されています。
・インプラント体(人工歯根)
・被せ物(人工歯/上部構造)
・アバットメント
インプラント治療では、まず歯がなくなった部分の歯茎にインプラント体と呼ばれる人工歯根を埋め込み、アバットメントという歯の土台となるものを装着します。
その上に被せ物(人工歯/上部構造)を被せると治療が終了です。
インプラントの術式には以下の2種類があります。
・1回法
・2回法
どちらの術式で行うかは、患者さんの顎骨や口腔内の状態などによって変わってきます。
そこで一人ひとりの状態に合わせた最適な治療法を選択する必要があるのです。
それぞれの方法を詳しく解説しますので、ご確認ください。
インプラントの「1回法」は、外科手術を1回のみ行う治療法です。
インプラント体を埋入する際にアバットメントを歯茎の上に出した状態にしてインプラントと顎の骨と結合するのを待ちます。
その後に結合を確認して上部構造を被せる方法です。
インプラント1回法の治療は以下の流れで進んでいきます。
①インプラント体の埋入
②インプラント体と骨の結合
③上部構造の装着
1回法の治療の流れを具体的に説明します。
歯を失った部分に局所麻酔を打ってから歯茎を切開します。
その後、専用のドリルを用いて顎の骨に穴を開け、インプラント体を埋め込んでアバットメントを取り付けますが、このときアバットメントを歯茎の外に出しておきます。
これで外科手術が終了です。
インプラント体の埋入から骨が定着するまでの間、仮のアバットメントで対応する場合もあります。
②インプラント体と骨の結合
インプラント体と顎の骨がしっかり定着するまでの結合期間に入ります。
結合期間は患者さんの骨の状態や部位によって異なりますが、およそ3~6ヶ月程度です。
③上部構造の装着
インプラント体がしっかり定着したら、上部構造の型取りが必要です。
そして、上部構造が出来上がったら、アバットメントに上部構造を取り付けていきます。
仮のアバットメントを装着している場合は最終的なアバットメントに取り替えます。
上部構造を装着後、噛み合わせを念入りに調節して、問題がなければ治療が終了です。
インプラント1回法には以下のようなメリットがあります。
・外科手術が1回で済ませられるため体の負担が少ない
・治療回数が少ない・インプラント治療をしてから被せ物が入るまでの治療期間が短い
・治療のコストを抑えられる
・その日のうちに仮歯を入れられ、食事ができる
外科手術を1回で済ませられるため、患者さんの負担が少ないのが大きなメリットです。
インプラントの1回法には以下のようなデメリットもあります。
・骨の厚みや量が必要であるため、適応にならない場合がある・歯茎の上にアバットメントが出ている状態のため、骨移植をした場合など感染リスクが高くなる
1回法ではアバットメントを露出した状態で結合期間に入るため、その期間は口腔内を清潔に保つ必要があります。
歯科医院によっては1回法を行っていない場合もあるので注意しましょう。
1回法で使われるインプラントには以下の2種類があります。
・1ピース型・・・インプラント体とアバットメントが一体型のもの
・2ピース型・・・インプラント体とアバットメントが分かれているもの
2回法では2ピース型を使いますが、1回法では2ピース型だけでなくインプラント体とアバットメントが繋がっている1ピース型を使う場合があるのです。
それぞれのメリット・デメリットをおさえておきましょう。
メリット |
デメリット |
|
1ピース型 |
・2ピース型よりパーツが少ないため費用を抑えられる ・工程が簡単で治療期間が短くなる |
・骨の量が少ない場合、アバットメントで調整できない ・アバットメントに不具合があった場合でもインプラントごと治療する必要がある |
2ピース型 |
・アバットメントを自由に選べるので、様々なケースで使用できる ・アバットメントに合わせて被せ物の形を変えられる。 |
・1ピース型よりパーツが多いため、費用が少し高くなる ・被せ物が入るまでの工程が1ピース型より多いため治療期間が長くなる ・アバットメントをつけた後にネジが緩んでしまう場合がある |
インプラントの2回法は、外科手術を2回に分けて行う治療法です。
1回目の手術でインプラント体を完全に埋め込んで縫合し、インプラント体と顎の骨が結合した後、再び歯茎を切開してアバットメントを装着し、上部構造を取り付けるという方法になります。
インプラント2回法の治療は以下の流れで進んでいきます。
①インプラント体の埋入と歯茎の縫合
②インプラント体と骨の結合
③歯茎の切開とアバットメントの装着
④上部構造の装着
では、2回法の治療の流れを具体的に説明します。
①インプラント体の埋入と歯茎の縫合
歯を失った部分に局所麻酔を打ってから歯茎を切開します。
その後、専用のドリルを用いて顎の骨に穴を開け、インプラント体を埋め込みますが、アバットメントは取り付けず歯茎を縫合して定着するのを待ちます。
②インプラント体と骨の結合
インプラント体と顎の骨がしっかり定着するまでの結合期間に入ります。
結合期間は患者さんの骨の状態や部位によって異なりますが、およそ3~6ヶ月程度です。
③歯茎の切開とアバットメントの装着
インプラント体と顎の骨がしっかり定着したのを確認したら、二次手術です。
まず、局所麻酔を打ってから歯茎を切開し、インプラント体にアバットメントを連結させます。
その後、歯茎の回復を待つ期間を設けます。
④上部構造の装着
歯茎が回復したら、上部構造の型取りを行います。
上部構造が出来上がったら、アバットメントに上部構造を取り付けていきます。
上部構造を装着後、噛み合わせを念入りに調節して、問題がなければ治療が終了です。
インプラント2回法の主なメリットは以下の通りです。
・1回法よりも感染リスクが低い・安全性が高い
・様々な症例に対応できる
2回法は1度目の手術の後歯茎を完全に閉じるため、1回法よりも感染リスクが低くなります。
人によっては顎の骨の量が足りなかったり全身疾患があったりして1回法に適応できません。
しかし2回法では様々な症例に適応するという点もメリットです。
インプラント2回法には以下のようなデメリットがあります。
・歯茎を2回切開するので、負担がかかる・歯茎を切開して治癒を待つ期間があるため治療期間が長くなる。
2回法は外科手術が2回必要で、そのぶん負担がかかります。
手術を2回に分けるため、治療期間が長くなってしまうのは避けられません。
インプラント治療においては、患者さんの口腔内の状態や治療計画によって様々な手術が必要になるケースがあります。
手術の方法やメリット・デメリットを紹介するので参考にしてください。
骨造成とは、骨を増やすために行う手術です。
インプラント体を顎の骨に埋め込む際に骨の量や厚みが足りなかった場合でも、骨造成をすれば、骨の量や厚みを増やして安全に手術が行えるようになります。
骨造成によって、インプラント治療が難しいと思われる場合でも治療に耐えられる土台づくりができるでしょう。
一方で、治療期間が長くなったり、生活習慣や全身疾患がある場合は骨造成ができなかったりする場合もあるので注意が必要です。
骨造成手術の術式にはソケットリフトやサイナスリフトがあります。
ソケットリフト
ソケットリフトは、主に上顎の奥歯の骨が局所的に薄い場合に、骨補填材を入れて骨再生を行う治療法です。
上顎洞部分の骨が少し足りない場合に行われる施術となります。
治療を行うためにはインプラントが固定できる5mm以上の骨の厚みが必要です。
サイナスリフト
サイナスリフトは、ソケットリフト同様に小鼻の脇にある上顎洞の底部に骨補填材を埋入して骨再生を行う治療法です。
この方法は、骨の厚みが5mm未満、または広範囲にわたって多数の骨が欠損しているような場合に対象となります。
サイナスリフトはソケットリフトと比較して、より広範囲にわたっての骨造成が可能です。
抜歯即時埋入法というのは、抜歯と同じタイミングでインプラント手術を行う方法です。
一般的なインプラント治療では、歯を抜いた部分の傷が回復してからインプラント体を埋入します。
それに対し、抜歯即時埋入法では歯を抜いた直後にインプラント体を埋め込むため、治療期間が短く手術回数を減らせるのです。
一方、感染症のリスクが高まるほか、対応している歯科医院が少ないというデメリットもあります。
オールオン4は、最小で4本のインプラントによって全ての歯を支える治療法です。
一般的なインプラント治療では、1本のインプラント体を顎の骨に埋め込み、アバットメントを装着して上部構造を固定します。
一方、オールオン4では最小4本のインプラント体を埋め込み、そこに一つの入れ歯のようになっている歯茎がついた上部構造を装着するのです。
オールオン4の上部構造には4本の人工歯がついており、少ないインプラント体で失った全ての歯を補うことができます。
しかし十分な骨の量が必要であるため、適応する症例が限られる治療法です。
インプラントオーバーデンチャーとは、インプラントと入れ歯の両方を組み合わせたもので、取り外しができる入れ歯をインプラントで固定する治療法です。
外科手術によって顎の骨に埋め入れた2~4本のインプラントを埋入し、歯を磁石の吸引力などにより入れ歯を安定させます。
ワンタッチで取り外しができるため、高齢の方でも外しやすいものの、歯を入れるまで3〜6ヶ月程度の期間が必要です。
本記事ではインプラントの術式について解説しました。
インプラント治療は1回法・2回法という術式があり、どちらが優れているというわけではなく、患者さんのお口や骨の状態によって治療方法が変わってきます。
どちらの治療にもメリットとデメリットがあるため注意が必要です。
適切な歯科医院選びを行うと、治療の疑問点を解消できます。
インプラント治療は、万が一歯を失った場合でも、元の歯のように機能させられる大切な治療法です。
自分に合った方法を選択して、安心して治療を進めましょう。
東京都品川区YDC審美インプラント治療専門ガイド
監修:山手歯科クリニック(大井町・戸越公園) 理事長/齋藤和重